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クリスマス・バトルロイヤル

本当に久しぶりのSS投稿w
締め切りとかないとまったく書けない・・・次にあげられるのは何か月後かw

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新春プロレス

新春あけましておめでとうございます。

去年の後半はほとんど更新もしないブログに来ていただいた皆様、どうも申し訳ありませんでした。

今年はできる限り上げていきたいと思っておりますので、こんなブログですが今年もよろしくお願いします。

今回の更新は、時期に合わせて巫女風コスチュームの雫のSSになります。続きを読むからどうぞ。

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テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

Bloody Christmas

本当に・・・ほんっとうに長く更新停止してしまいましたが、生存報告ついでの短編を上げさせていただきます。ちょっと気の早いクリスマス短編で、当ブログの看板娘の雫が今回も大流血となります。

では、続きを読むからご覧ください。

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テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

リングの妖精5

第5話「飛躍」




 超大型の試合会場に、二人の女性のバストアップ写真が張り出されている。片方は純白のコスチュームに秀麗な美貌の月嶋雫、そしてもう片方は厳つい顔に、返り血を思わせる赤のペイントを施したブラスター狂子だった。
 そして、その看板の中央にはこう書かれてあった。
WWWAチャンピオン選手権【舞闘天使(バトルエンジェル)VS破壊女帝(ブラスティングエンプレス)】



 入場してきた雫のコスチュームは、チューブトップの白ビキニをひもでワンピース風につなげた大胆なものだった。普段は流している長髪もポニーテールに結っている。清楚な雫と、大胆なコスチュームのギャップに観客がざわめいた。


「青コーナー、究極のベビーフェイス、月嶋~!!しず~~く~~~!!」


 アナウンスの紹介のとたんに爆発的な声援が会場を揺るがした。雫の活躍で正規軍も徐々に勢力を盛り返してはいるのだが、ヒール軍上層部と互角以上に渡り合えるのは今のところ雫一人だ。この試合、雫が勝てば、正規軍とヒール軍の勢力がどう変動するのか、否が応でもファンの期待は高い。


「赤コーナー、最凶最悪暴虐ヒール、ブラスター、きょう~こぉ~~~!!!!」


 黒革のボディスーツに身を包み、片手にはチェーン、そしてもう片方には大きな棺桶を担ぎ、まるでターミネーターのようなスタイルで入場してくる。
 前回油断から雫に敗北を喫し、結果として正規軍の台頭を許したブラスターは、この試合で雫から完全な勝利を得るつもりでいた。


(もう油断はしねぇ‥‥‥!!今度こそ、今度こそあの澄ました面を‥‥‥!!)


 今にも雫に飛びかかりそうなブラスターに、雫も緊張感を高めている。


(前回の勝利ははあくまでブラスターの油断‥‥‥。今度はもう遊びはない‥‥‥。でも、絶対に負けられない‥‥‥!!)


 両者がリング中央に歩み寄り、ゴングが鳴らされた。


 カァーーン!!


 ゴングが鳴らされると同時に両者ががっぷりと4つに組む。しかし、体格の差は大きく、ブラスターがたちまち雫をロープ際まで追いつめる。


「はっ!!この程度かよっ!!おらぁっ!!」


 ブラスターが雫をロープへと振る。そして、ロープにはね返されて戻ってきた雫に、そのまま体当たりを仕掛けた。


「くはぁっ!!」


 ブラスターの体当たりを受けて大の字に倒れた雫に、追撃の毒針エルボーが打ち込まれた。


 どこっ!!

「くぅっ!!」


 ブラスターの体重を胸元に喰らった雫は苦痛に顔を歪める。


「おらぁっ!!さっさと立ちやがれぇっ!!」


 続けざまの攻撃に曝される雫の髪を鷲掴みにしてブラスターが雫を立たせようとする、その瞬間を逃さず雫の反撃が開始された。


「調子に、乗るなーっ!!」


 体格の差から、筋力では雫はブラスターには遠く及ばない。しかし、雫は自分の体と相手の体をうまく操ることで、その差を埋めることができた。自分の髪を鷲掴みにしたブラスターの腕をうまく両腕で極めて、力が抜けたところを身をかがめて脱出する。そしてかがんだ状態から上半身を上げる勢いでブラスターの首に腕を回し、スイング式DDTでブラスターを頭部からマットにめり込ませた。


「がっ!?」


 ブラスターも雫を甘く見ているつもりはなかったが、前回の対戦では全く自分に歯の立たなかった雫の予想以上の成長ぶりに内心歯がみした。


(ちっ!!これがあのとき油断しちまったつけってわけかい!!)


 頭部を抱えて悶絶するブラスターに、続いてSTFを仕掛ける雫。


「どうだーっ!!ギブしろ、ギブーっ!!」


 リングの中央で完璧に極まったSTFだが、雫もこの程度でブラスターに勝てるとは思わない。そもそも体重差も筋力差も圧倒的であるため、まだ試合は序盤でしかないことを知っている。しかし、これはノーレフェリーノールールの試合だ。ここで少しでもブラスターの体力を奪っておく必要がある。


「くっ!!こ、のぉーーーっ!!!!」


 ブラスターと雫の体重差ならブラスターはロープまで這ってロープブレイクすることもできただろう。しかし、この試合はルール無用のデスマッチだった。華奢だが的確に極まった雫の関節技は認めたくないことだが確かにブラスターに効いている。


「‥‥‥ちぃっ‥‥‥!!認めてやるよ‥‥‥‥‥‥。てめぇはあたしの敵だってな‥‥‥‥‥‥!!!!」


 絞り出すようなブラスターの言葉。雫に捕らえられ、汗で全身をぬらしながらもその声には力と威圧が込められていた。


「っく!!まずいっ!!」


 とっさにSTFをはずして距離をとろうとした雫だったが、今度はブラスターの方が早かった。


「うああああぁぁぁぁっ!?」


 雫の小さな顔いっぱいにブラスターの大きな手が食い込み、力任せに締め上げたのだ。前回のアンジェラの怪力に勝るとも劣らない、STFを極められている状態から肩越しに手を伸ばして出しているとは到底思えない握力が雫の頭蓋骨を締め付ける。


「は、放してぇ‥‥‥!!」


 ぎりぎりと締め付けるブラスターの左手を引きはがすことができず、STFを放して立ち上がらされる雫。


「ちょっとばかり痛かったぜ、さっきのはな‥‥‥‥‥‥!!」


 アイアンクローから解放された雫は、そのまま右脇に首を抱え込まれ、スタンディングドラゴンスリーパーの体勢にされた。そのままドラゴンスリーパーに持ち込むのかと思われたが‥‥‥。


「ふんぬおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 ブラスターはそのままブレーンバスターの要領で雫を持ち上げた。そのまま逆さまになるまで雫が持ち上げられていく。


「な、あ‥‥‥。ま、まさか‥‥‥」


 これから自分がどうなるのか、想像できてしまった雫の顔が強張った。


「そうさ。やっぱり結構勘がいいなぁ。言っただろ?さっきのお返しだってなぁ」


 リングを一周して雫を観客に晒したブラスターは、雫の頭に血が上るのを見計らい、その場でジャンプし、リバースDDTで雫が後頭部からマットにめり込んだ。


「い、いや、やめ‥‥‥‥‥‥!!」

 ズゥ~ン!!


 雫とブラスターの二人分の体重が受け身もとれない体勢のまま雫の首にのしかかった。


「ひぃ‥‥‥‥‥‥っ!!」


 首と後頭部を押さえ、マットに横たわり悶絶する雫。ブラスターはマットに横たわる雫にストンピングを浴びせる。


「おら、鳴けよ!!らららららららら!!!!」

 どぼっ!ずむっ!!

「あぁ!!ぐぶ‥‥‥!!おぅ‥‥‥!!」


 蹴り付けると言うよりも蹴り潰すという形容の方が正しいブラスターのストンピングは雫の胴部にめり込み、雫は右に左に転がり廻る。
 やっとの思いで場外に脱出できたが、試合開始前には染み一つ無かった雫の肌には何カ所も痛々しい青あざが浮かび上がっていた。


「く、はぁ‥‥‥‥‥‥」

(つ、強い‥‥‥。思っていた以上に‥‥‥)


 場外に転がり落ちた雫は、良く知っているつもりだったブラスターの強さを改めて実感していた。しかし、ブラスターは雫に休息をとる隙を与えない。


『うおおおおおおおおおおおおっ!!?』


 頭を振って立ち上がろうとした雫の耳に、観客のどよめきが飛び込んできた。何が起こったのか顔を上げた雫の目に、ロープに飛び上がったブラスターの巨体が映る。


「嘘!?」


 雫も、ロープに飛び乗ってからの飛び技を得意としている。しかし、それは雫のような空中技の得意なレスラーであればだ。ブラスターのような重量級のレスラーがそれをするなどプロレスの常識から外れている。
 しかし、雫の常識はブラスターによって完璧に覆された。危なげなくロープ最上段に飛び乗ったブラスターは驚愕に動きを止めたフェリーに向かいにやりと顔を歪め、そのまま前転して飛び降りたのだ。


「え?あ、あああああああぁぁぁぁーーーっ!!!!」


 ブラスターのスワンダイブ式セントーンに、動きを止めていた雫は無防備なまま押し潰された。


「く、‥‥‥‥‥‥うぁ」


 場外で仰向けにダウンした雫の形良くふくらんだ胸を踏みつぶしながらブラスターが咆吼した。


「はっはぁーーーーっ!!!!どうしたどうしたぁっ!!こんなもんでもうダウンかぁっ!!!!」


 だん、だんっ!とさらに雫の胸にストンピングをかけ、その度ごとに雫の体が跳ね上がる。


「う、うぅ~~‥‥‥‥‥‥、ヘア~~」


 苦しげに呻く雫の髪をつかんだブラスターは、その怪力にものを言わせ、雫を観客席にそのまま投げ飛ばした。


「飛べ、オラーーーーッ!!!!」

「うああああああああああーーーーっ!!」


 髪が付け根から引きちぎられるような痛みに絶叫しながら雫の体が振り回されて、観客席に突っ込んでいく。


 ガシャ、ガラ、ずざーーーっ!!


 イスが倒れ、弾き飛ばされ、雫の細い体はなぎ倒されたイスに埋もれるように横たわった。


「う、うぁ‥‥‥」


 呻きながら立ち上がろうとして、膝立ちになったそのとき、ブラスターの攻撃が雫を襲う。


「まだ安心できねぇぞ、こらぁーーーっ!!!!」


 助走を付けたブラスターのヤクザキックが雫の胸に突き刺さった。


「うぶぅ‥‥‥っ!」


 胸を襲う衝撃に息を詰まらせた雫は成す術なく後ろに体を飛ばされた。イスに腰掛けた格好のまま後ろに滑るが、その勢いは止まることなくイスごと後ろに倒れ込み、観客席を巻き込む形で場外に横たわる。
 華奢な肢体の雫がイスの下敷きになってダウンしている姿に観客が悲鳴を上げた。前回の対戦のように雫の勝利を信じているのだろう、声が嗄れそうなほどに叫んでいる。
 しかし、それ以上に大きいのは、女子プロレス界の女帝と言われるブラスターを応援する声だ。雫の応援をかき消すほどに大きく雫を血祭りにしろとの声が飛び交う。


「はぁ、はぁ、‥‥‥く、くふぅ‥‥‥‥‥‥」


 その中で、雫はイスの下敷きになったまま息を整えようとしていた。試合が始まって以来、試合のペースはブラスターに握られ、雫は単発的にブラスターに反撃をしたがその反撃がブラスターに効いているとは思えない。


(これが‥‥‥ブラスターと私との実力差‥‥‥‥‥‥)


 前回の対戦でブラスターに奇跡的に勝ったとは言え、雫は自分がブラスターを上回ったとは思っていない。しかし、それからも練習を怠らなかったことから少しは実力も縮まったかと思っていた。しかし、身体中に走る鈍痛が、まだブラスターと雫では格が違うことを物語っている。


「いつまで寝てるんだい?起きれないなら起こしてあげようかぁ?」


 天井を仰いでいた雫の目に、イスを大きく振りかぶったブラスターの姿が映る。


「‥‥‥‥‥‥!!」


 とっさにその場を転がって逃げようとする雫だったが、身体中にのしかかったイスが邪魔をして、とっさに動くことができない。


 がしゃぁんっ!!

「う‥‥‥!!あぁ‥‥‥‥‥!!」


 体の上にのしかかっていたイスの上から叩き付けられた衝撃に、雫が悶絶する。


「やっと起きたかぃ。じゃぁこれから散歩の時間だよ!!」


 悶絶する雫の髪をつかみ、首にチェーンを巻いてブラスターが立ち上がった。雫の上体が力任せに引き起こされ、体にまだまとわりついていたイスが音を立てて転がり落ちる。


「ご、ごほっ‥‥‥、チェ、チェーン‥‥‥?卑怯‥‥‥な‥‥‥‥‥‥」


 のどを掻きむしるようにして首を締め付けるチェーンを外そうと藻掻く雫を犬の散歩のように場外で引き回し、グロッキー状態の雫を立たせ、リングサイドの鉄柱に額を叩き付ける。


 ごんっ!!

「あぅっ!!」


 鉄柱と額がぶつかり合った大きな音が会場に響き、リングのエプロンに寄りすがる格好で雫が崩れ落ちる。


「ふん、面の皮が厚い分結構頑丈だな!!」


 もう一発、鉄柱攻撃を加えようとして、雫の髪を鷲掴みにするブラスター。雫のポニーテールにまとめていた髪は場外乱闘の最中にほどけ、全身をぬらす汗で雫の肢体に張り付いている。


「試合はまだこれからだろ、もっとつきあえよ‥‥‥。そ~ら、もう一発‥‥‥!?」


 これまでブラスターのペースのままに試合が進み、ブラスターにも油断があった。しかし、それ以上に雫の成長にもよるのだろう。ブラスターの鉄柱攻撃を切り返し、前回の、ブラスターと試合をしたときなら既にKOされているほどのダメージを受けた雫が反対にブラスターを鉄柱に叩き付けたのだ。


 ごぉん!!


 今度はブラスターの頭部と鉄柱が鳴らす音が会場に響いた。


「が~~~‥‥‥!!」


 雫の反撃に、鼻を押さえて悶絶するブラスター。


「今度はこちらの番よっ!!」


 そして、その隙にリングに上がった雫の、エプロンサイドで助走を付けたミサイルキックがブラスターを鉄柵に吹き飛ばす。


 ガッシャーーン!!


 鉄柵が体に食い込み、タフなブラスターもたまらず苦しげに呻きを漏らす。


「く、くそ‥‥‥!!の、アマァ‥‥‥‥‥‥!!」


 ブラスターの脳裏に、前回の試合で雫の反撃を受け、3カウントを奪われた悪夢が甦る。感情が沸騰し、闇雲に立ち上がるブラスターだが、その頭上から雫が舞い降りていることに気づけずにいた。


「なっ!?う、がぁっ!!」


 やられたことのお返し‥‥‥、ブラスターのスワンダイブ式セントーンを受けた雫は、そのお返しのスワンダイブ式ボディプレスで立ち上がりかけたブラスターを押し潰した。
 会場がどよめく。雫の反撃に歓喜する者、ブラスターの不甲斐なさをなじるブラスターのファン、それらの声が会場を轟々と揺らす。


「まだこれからだっていったわね‥‥‥。その通りよ!!これからが本番よ!!」


 場外でダウンするブラスターを立たせ、会場中に凛とした声を響かせる雫。ふらふらと足下の定まらないブラスターの背後に回り、腰に手を回し、


「行っけぇ~~~~っ!!!!」


 勢いよくバックドロップでブラスターを投げ飛ばす。


 どさっ!

「ぐぅぉっ!?」


 場外の固いマットに投げ飛ばされたブラスターがそのまま場外でダウンした。しかし、雫もこれまでに受けたダメージが大きく、いったんリングに戻り息を整えようとする。


「はぁ、はぁ、はぁ‥‥‥‥‥‥」

(やっぱり強い‥‥‥。でも、私は今ブラスターと闘えている‥‥‥!!)


 前回は勝ったとは言え、ブラスターの油断をついての勝利であり、試合ペースのほとんどはブラスターに握られていた。しかし、今は違う。確かにブラスターの強さは変わらないし、試合ペースもブラスターが優勢だ。だが、それでも今の雫にはブラスターと闘っているという実感があった。
 そしてそれは観客も同じだった。確かに試合全体ではブラスターの方が雫を上回っているものの、良い勝負をしている、と誰もが認めていた。この時点でブラスターが試合前に決意していた団体の新時代の到来をうち砕くことは不可能となったのだ。
 雫に続いてリングに上がったブラスターが構えをとる。


「くっ!!らぁっ!!」


 同じく構えをとる雫だったが、ブラスターが先手をとった。ロー、ミドル、雫の足を、胴を重い衝撃が襲う。


「ぐ、ぐぅ‥‥‥っ」


 体勢の崩れた雫の首をめがけ、ラリアートを叩き込もうとするブラスターだったが、命中すればダウンは必死の一撃は、空を切った。


「なっ!?どこだ!!」


 ラリアートの空振りで雫に背中を向けてしまったブラスターが慌てて振り向く。そこで重い衝撃がブラスターのあごを襲った。


「てりゃぁーっ!!」


 ブラスターのラリアートを身をかがめてかわした雫のローリングソバットがアッパーの要領でブラスターのあごに決まった。これにはたまらずダウンするブラスター。


「フォールゥー!!」


 ダウンしたブラスターを押さえ込み、フォールをとる雫だが、カウント2ではね返される。
 観客が、雫の実力が試合開始の時とはまるで違うことに気付く。試合開始の時点では、確かに前回の対戦の時より実力は増していたものの、ブラスターと比較すればまだ格下に見えた。しかし、今は違う。団体最強のブラスターを相手取り、対等に戦っているのだ。


(何でだ!!何でこんな事になっちまったんだ!!)


 ブラスターが内心で叫ぶ。前回は油断で敗れたとは言え、まだ実力差はあると踏んでいた。そして、それはさっきまで間違いなかった。しかし、いまはどうだ。この目の前の女はこの自分に対等に渡り合っている!!


(そんなことがあってたまるかよ!!)


 雫のドロップキックを喰らい、マットに倒れ込みながら思う。この女を絶対に殺す、と。


「これなら、行ける‥‥‥っ!!」


 一方の雫は、ブラスターを攻め込みながら自分が強くなっていることを実感していた。確かに体中が痛く、手足は重いがそれでも自分の思い通りに動いてくれている。
 得意のバックドロップの体勢に入った雫は、立ち上がったばかりで体勢の整っていないブラスターの背後に回り、腰に手を回す。


「行っくぞっ!?」

 ごっ!!


 一気に投げ捨てようとした、その瞬間に雫の側頭部に何か固いものがぶつかった。位置的に、エルボーだが、肘の堅さではない。もっと別の金属だ。


「ぐ‥‥‥ぅ‥‥‥っ」


 側頭部に手を当ててよろめく雫。一瞬気を失うほどの衝撃に目がくらむが、歯を食いしばってブラスターを見上げる、その目にパイプイスが飛び込んできた。


 がんっ!!


 雫の額の髪の付け根にパイプイスのパイプの部分が叩き込まれた。


「うあああぁっ!!!!」


 額を襲う衝撃に、悲鳴を上げてマットに倒れた雫。


「くうぅっ、な、何?」


 目を開こうとして、失敗する。顔を何か、熱くぬめるような液体がぬらしている。不快なその感触に、手で顔をぬぐった雫は、顔をつたっているのが自分の血だと言うことに気付いた。よほどさっきの一撃で深く切れたのだろう。雫の顔はすぐに真っ赤に染まり、純白のコスチュームも血で染まっていく。


「へっ、思った通り化粧映えするな、テメェはよ。でもまだ足りねぇよな。もっともっと赤くそまらねえとよぉ!!」


 ブラスターの声を頼りに、マットを這いながら離れようとする雫。視界は血で染まり、手でこすっても手が赤く染まるだけで視界が戻らない。


 どぼっ!

「うぶ‥‥‥っ」


 目の利かない雫の脇腹に、ブラスターの大振りのサッカーボールキックがめり込む。


「‥‥‥‥‥‥!!」


 蹴りとばされた雫がコーナーポストの下まで転がる。


「か‥‥‥、ふぁ‥‥‥‥‥‥」


 コーナーポストにすがるようにして立ち上がろうと藻掻く雫だが、その後ろには既にブラスターが迫っていた。


「ちっ、まだ藻掻けるのかよ」


 真後ろから聞こえたブラスターの声に、雫は慌てて振り向こうとするが、なぜか覚悟していた攻撃が来ない。


「‥‥‥?」


 疑問に思いながらも立ち上がった、その瞬間に、体に蛍光灯の束が叩き付けられ、鋭いガラスの破片が雫のむき出しになった肌を切り裂く。


「あぐぅぁっ!!」


 全身を襲う痛みに悲鳴を上げる雫。腰が砕け、雫はコーナーポストを背にしてしりもちを付いた。


「どうだ、こいつは初めてだったよなぁ。初体験か。めでたいじゃねぇか!!」


 ブラスターが苦痛に悶える雫の腹部を踏みつぶすようなストンピングをかます。


「ウブ‥‥‥ッ」


 腹部を抱えてうつぶせになった雫の髪をつかみ、立ち上がらせたブラスターは、セコンドが投げ込んだ有刺鉄線をぐるぐる巻にしたボードをリング中央に置き、ふらふらの雫にラリアートを叩き込んだ。目の利かない雫はかわすこともできずに剛腕の一撃を食らい、そのまま背中から有刺鉄線ボードに叩き付けられた。


「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 体の後ろを有刺鉄線で抉られた雫が苦痛に絶叫した。華奢な肢体がそり上がり、手足が苦痛に痙攣する。
 有刺鉄線に縫い止められた雫に、さらなる攻撃が繰り出される。コーナー最上段からのフットスタンプがブラスターの巨体で繰り出されたのだ。


 どぼぉっ!

「っかぁ‥‥‥‥‥‥!!!!」


 これにはたまらず体が有刺鉄線に傷つけられるのも意識せず、雫は腹部を抱えて悶絶した。

「まだ終わってねぇぞ!!ぼさぼさしてねぇでさっさと立て!!」


 しかし、ここまでやっておきながらブラスターの攻撃はまだ終わらない。KO寸前の雫をブルドッキングヘッドロックで今度は体の前面を有刺鉄線ボードに叩き落とす。


「いやああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」


 これでもう何度目になるのか、雫の悲鳴が会場に響き渡る。ブラスターも有刺鉄線で傷ついているはずなのだが、全く意に介した様子はなく、雫の悲鳴に嗜虐的な笑みを浮かべ、雫の背中を何度も蹴り付ける。


「ひいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃっ!!!!」


 蹴り付けられるたび、雫の肢体が有刺鉄線に切り裂かれて流血が増していく。その苦痛に耐えかね、ついに雫の瞳から涙がこぼれ始めた。
 ぐったりと力無くダウンした雫をロープにくぐらせて磔にしたブラスターは凶器の仕込まれたエルボーで雫の額を攻撃する。


 ごっ、ごっ、ごっ!


 明確に凶器の立てる音に観客が気付き、さすがにブーイングが飛び始める。しかし、ブラスターは毛ほどにも頓着せずに雫の額を抉り続ける。


「‥‥‥!!‥‥‥‥‥‥!!‥‥‥!!」


 雫の額からさっき以上に鮮血が溢れ、雫の肢体がさらに赤く染まっていく。大きく悲鳴の形に開かれた口からはかすれた声しか出されない。かろうじて自由に動く手足を暴れさせて脱出しようと足掻くがブラスターが後ろ髪をがっしりと掴んでいるためにそれを果たすことができない。
 あまりに凄惨な光景にブラスターにブーイングを飛ばしていた観客も静まりかえった。会場にはブラスターが雫の額にエルボーを落とす音だけが響き、流血が増すごとに雫の動きも鈍くなっていく。


「‥‥‥へっ、ようやくくたばったかよ」


 ブラスターが返り血で赤鬼のような形相になり、雫の肢体が流血で真っ赤に染まり、マットに血だまりができ、ついに磔にされながらも脱出しようと藻掻いていた雫が動きを止めた。
 ここまでやってようやくブラスターがフェリーを磔から解放する。


 びちゃ‥‥‥


 磔から解放された雫はそのまま自分の作った血だまりに倒れ伏した。ブラスターは誰が見ても既に失神しているようにしか見えない雫の足を取り、両脇に抱え込む。
 既に公開処刑の場と化したリング上の惨劇に、観客がブーイングを飛ばすが、ブラスターはかまわずジャイアントスウィングで雫の体を振り回す。


「さぁて、今日の天気は血の雨にご注意くださいってなぁ!!!!」


 軽々と振り回される雫から鮮血が場外の観客席にまで飛び散り、観客が悲鳴を上げる。30回を越えて振り回された雫がブラスターの手を離れて飛び、マットに血の跡を残しながら場外に落下した。


「先輩、大丈夫ですか!!先輩!!!」


 正規軍の後輩が雫を抱き起こす。顔を染める血を水で洗い落とし、額に深く抉られた傷をいったんタオルで押さえる。綺麗にぬぐわれた雫の顔は大量の出血で血の気が引き、体からは力が感じ取れない。
 もうこれ以上の試合続行は不可能だと判断し、セコンドが試合終了を要請しようとした、そのとき力の抜けきっていた雫の腕がセコンドを押しのけようとする。


「‥‥‥‥‥‥だ‥‥‥える‥‥‥‥‥‥」


 意識が混濁しているのだろうが、雫がまだ闘志を失っていないのはよく分かる。しかし、このままでは雫のレスラー生命どころか命そのものが危ぶまれるほどの状況だ。


「‥‥‥まだ‥‥‥‥‥‥終‥‥‥ない‥‥‥」


 体を反転させ、四つんばいになって立ち上がろうとする雫に、観客席から声援が飛び始める。最初はまばらに、しかしついに会場を揺るがすほどの大声援に背中を押されるようにして雫が立ち上がった。


「無理です!!もう無理ですよ!!もう止めてください!!」


 しかし、雫のセコンドだけはそれに同調せず雫に懇願する。たとえ立ち上がったとしても、試合になるかどうか、ブラスターの凶悪ファイトの餌食になるだけに思えたからだ。
 しかし。


「‥‥‥‥‥‥ッ!!」


 振り返って微笑んだ雫の顔に、セコンドは言葉を飲み込んだ。


プロレスラーはね、アマチュアに負けるわけには行かないのよ‥‥‥」


 マットにはい上がった雫をブラスターが迎撃する。ロープ越しに雫をマット中央に投げ飛ばしたブラスターは雫の額を抑えていたタオルをはぎ取り、拳に巻いたチェーンで雫の額を抉る。たちまち雫の顔が鮮血で染まっていくが、雫はそれにかまわず掌打でブラスターに反撃する。


「このっ!!小娘っ!!があぁっ!!」


 だが、雫の反撃も虚しく打撃戦を押し切ったのはブラスターだった。雫を殴り倒し、倒れた雫の背中にパイプイスを叩き込む。
 苦悶する雫をそのままに、コーナー最上段に上ったブラスターは雫に背を向けたまま毒針エルボーでとどめを刺そうとする。しかし雫の粘りはブラスターの想像を上回っていた。


「ま‥‥‥だぁ‥‥‥っ!!」


 ブラスターを追ってコーナーに上った雫が、フランケンシュタイナーの逆向き版でブラスターをマットにめり込ませ、そのままジャックナイフでピンフォールにとる。


「がああああああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!」


 獣のような咆吼を上げ、ピンフォールをはね返すブラスター。ほとんど狂乱した彼女は拳を握り、雫に向かって殴りかかる。チェーンを巻き、威力を増したそのパンチをまともに喰らえば雫はひとたまりもなく倒れるだろう。しかし、あたればKO必至のそのパンチを雫はブラスターが持ち込み、自分の額を割ったパイプイスのカウンターで返した。


 がんっ!!


 パイプイスの底が抜けるほどの強烈な一撃がブラスターの頭部を襲う。非常に珍しい、雫の凶器攻撃に驚いた観客だが、そのままブラスターを血祭りにしろと、声を飛ばす。
 しかし、雫はその声に応えることなく手にしたパイプイスを放り捨てると、ロープに走り、その反動を利用し、前転しながらのかかと蹴りを棒立ちになったブラスターの側頭部に叩き込む。


「さぁ、立てぇーーーっ!!!!」


 息を荒らげ、声を震わせながらもブラスターを立ち上がらせようとする雫に、ブラスターの反撃のボディブローが叩き込まれる。


「く、ぐぅ‥‥‥っ、舐めるなぁーーーっ!!!!」


 雫はパンチに顔をしかめるが、腰の入っていない、重さのないパンチなどでひるみもせず、お返しの張り手でブラスターをよろめかせた。
 会場中に響く張り手の音とともに試合前は山のように揺るぎなかったブラスターの体が今では頼りなく動揺する。そのブラスターの腰に手を回した雫の、切れ味鋭いバックドロップがついに炸裂した。


「な、何でだ‥‥‥!!何でこんな‥‥‥事‥‥‥に!!」


 試合開始前はさらさら負ける気など無かった。試合半ばでも確かに想像していたよりは強かったが、それでも負けるとは思わなかった。しかし、雫は試合の中で成長し、驚異的な粘りを見せ、ブラスターは凶器攻撃で雫を血祭りに上げながらも今追いつめられている。
 団体最強のプライドだけを頼りにして立ち上がるブラスターだったが、雫が既に背後で必殺技の準備を万端に整えていた。がっしりとブラスターの両腕をクロスさせて固定し、そのままブラスターを肩車の体勢にとる。そして、震えようとする足腰に力を込めてそのまま美しい弧を描き、ジャパニーズオーシャンサイクロンスープレックスホールドが炸裂した。


「ワーン!!ツーゥ!!ス‥‥‥!!!!」


 そのままカウントをとるが、ブラスターは最後の意地でブリッジを崩す。しかし、そこでブラスターの気力もとぎれ、そのまま仰向けに大の字になって倒れたブラスター。


「いくぞーーーっ!!!!」


 雫も、最後の力を振り絞り、コーナー最上段に駆け上る。自らの流血で全身が深紅に染まっているが、その闘志はまだ燃えている。
 そして、美しい弧を描くムーンサルトプレスが試合終了を告げた。押し潰されたブラスターは既に立ち上がる気力を失い倒れたままだ。
 観客が絶叫し、アナウンスの声が完全にかき消される。
 勝者の雫も、血の海と化したマットにブラスターを押さえ込んだ体勢のまま動かない。


「先輩、先輩っ!!しっかりしてください!!」


 精根尽きながらも慌てて駆け寄るセコンドに血にまみれた顔で微笑んで立ち上がるのに肩を貸してもらう。勝者の雫に渡されるトロフィーとチャンピオンベルト。
 観客の声は静まることを知らず、雫が退場してもしばらくは静まる様子を見せなかった‥‥‥。




 こうして雫はブラスター越えを果たし、大日本女子プロレスは新たな時代に入った。正規軍も、雫に引きずられる形でレベルアップを果たし、今では対等にヒール軍と渡り合っている。ブラスターは敗戦の後すぐに引退し、今も行方はしれない。
 正規軍とヒール軍がほぼ互角となったことで、よりドラマチックな展開で多くの観客を集めることができ、団体上層部もほくほく顔でいる。



 そして、月嶋雫は、アンジェラとブラスターとの試合で、連続して入院となったため、大事をとって1ヶ月間休場となり、復帰戦では大会場を埋め尽くすほどのファンが詰め寄った。
 そして、今日も満員の観客の中、最強のチャンピオンの名がコールされる。


「赤~コーナーー!!WWWAチャンピオン~!!月嶋~~、しず~く~~~!!!!」

リングの妖精4

第4話「パワーvsテクニック」




 熱狂のるつぼにある会場に現れたのは、身長200cmを優に越す魁偉な体躯を茶色のボディスーツに包み、その上に皮ジャンを羽織った女であった。これだけ身長があればひょろりとした体躯になりそうなものだが、鍛え上げた筋肉ががっしりとつき、ほぼ城砦といって良いだろう。
 日本マットに上がってこれが3戦目となるが、1戦目では中堅レスラーが相手をしたが、何一つ良いところを見せることもできずに失神KO、2戦目ではアイドルレスラー3人を相手にしてハンディキャップマッチを行ったが、一人は失神、1人は逃亡し、最後の1人はギブアップすることもできないまま制限時間いっぱいまでいたぶりぬかれ、今では彼女の雑用係と化している。
 黒船の来寇にあっという間に窮地に立たされるBPWA正規軍。最後の望みとしてリングに上がるのは押しも押されぬ正規軍のトップである月嶋雫だった。



「青コーナー、モーストデンジャラスモンスター、アンジェラ・タイタン~!!」


 アナウンスにマッスルポーズでアピールするアンジェラだが、観客席からはブーイングしか飛んでこない。しかし、それに気を悪くした様子も見せずにニヤニヤと品のない笑みを浮かべている。そして、コーナーに戻り、皮ジャンを脱ぎ捨てる。その下に現れたのは隆々と盛り上がった筋肉の束だった。
 雫のコスチュームは、ハイレグ気味の白いワンピースに、青の布製のビキニアーマーをつけた、通称ヴァルキリースタイルである。ファッションモデル顔負けの容姿を誇る雫にはものすごい数のコスチュームの投稿がある。その中のセンスの良いものからコスチュームを作ることで異なる分野からファンを増やしていく、多角経営戦術の賜物である。しかし、雫自身は純粋にプロレスラーとしていたいのだが、上層部は雫を前面に押し立てて団体を復興させたいため、雫はそれに従わざるを得ない。


「赤コーナー、究極のベビーフェイス、月嶋~、しず~く~~~!!」


 とたんに爆発的な声援が会場を揺るがす。類稀な美貌だけでなく、実力も兼ね備えた雫は、プロレス界のスーパースターなのだ。
 200cm超のアンジェラと、162cmの雫、対峙してみると、大人と子供の方がよほど対等だろうと思えるほどの体格差である。


『かわいい顔をしてるね、いい雌奴隷になりそうだ』


 英語で馬鹿にしたように言うアンジェラ。巨体に怪力、そしてごつごつした容貌と、ヒールレスラーの条件を満たしたアンジェラだが、そのコンプレックスは深い。来日してからの暴れぶりもそのコンプレックスによるものが大きい。今回の対戦相手は日本でも有名なアイドルレスラーらしい。実力も美貌も兼ね備えた目の前の小娘がどんな顔をして泣き喚くか、想像するだけでコンプレックスから来る昏い喜びが背筋を走る。


『体が大きくて力があるから自分が強いと錯覚しているのね。私がこの場で目を覚まさせてあげるわ!!』


 対して、体格差に怯えの色も見せずにアンジェラによく分かるよう、英語で雫が言い放つ。表情にも声にも意志の強さがみなぎっていた。
 不敵な雫の言葉にこめかみをひくつかせたアンジェラは、それ以上軽口は叩かず右手を雫の頭に伸ばした。雫はその手を払いのけようとするが、まるで大木を相手にしているかのようにびくともしない。


「あ・・・・・・!!」


 雫の小さな頭部がアンジェラの手にすっぽりと収まった。まるで万力にかかったかのような痛みが雫を襲う。


「あああああああああっ!!」


 頭蓋骨がみしみしと音を立てる。あまりの苦痛に意識が白くなり、雫は自分が悲鳴を上げていることにも気づかなかった。


「ゴング前だからね、この程度で終わらせてあげるよ」


 余裕たっぷりに雫を解放したアンジェラ。意識が混濁した雫はぺたりとマットにへたり込んだ。へたり込んだ雫を横目で笑い、アンジェラはそのまま自分のコーナーへと戻る。へたり込んだ雫もまた、悔しさをこらえながらコーナーに戻り、体を屈伸させて身体の調子を確かめている。


 カーン!!

「うがああああぁぁぁ~~~~~~!!!!」


 ゴングが鳴り響き、リングを揺るがしながらアンジェラが雫に向かって突進してくる。まるで猛牛のような突進だ。並の度胸の持ち主なら威圧感に押されて棒立ちになり、そのまま吹っ飛ばされてしまうだろう。しかし、フェアリーは並ではなかった。


「それっ!!」


 正面からぶつかると思わせて、まるで体操の跳馬のようにアンジェラの上で前転し、そのまま反対側のロープに駆け寄る。そしてロープ最上段に飛び乗り、器用に体を操ってアンジェラにウラカンラナを仕掛けた。


「なぁーーっ!?」


 これまでの相手ならアンジェラが突進してくるとおびえて逃げようとするだけだった。しかし、フェアリーのように真っ正面から意表をつかれたのは初めてだった。
 とっさに動きのとれないアンジェラの首に足をかけ、そのままくるりと後方回転に移行するフェアリー。


「フォールッ!!」


 とっさの早業にカウントをとることを失念したレフェリーに、雫の叱咤の声が飛ぶ。


「え・・・?あ、ワン、ツー、スリ・・・!!」


 あっけにとられたアンジェラはカウントがとられていることにも気づいていないように身動きをとらない。そして、カウントが3つ入る寸前で雫は自らフォールを崩した。そして、倒れたままのアンジェラを見下ろし、ちょいちょいと手招きする。


「さっきの借りは返したわ。ここからが本番よ!!」

「うがあぁぁぁーーーっ!!!!」


 手加減された、その屈辱で頭をいっぱいにしたアンジェラは頭に血を上らせたまま立ち上がった。


「行くわよっ!!」


 気合一閃、雫のジャンピングニールキックがアンジェラを襲う。勢いをつけたかかとがアンジェラのあごに見事にヒットしたが、筋肉の城のようなアンジェラの肉体は小揺るぎもしない。


「やっぱり強いわね・・・・・・」


 どこから攻めるか、かすめただけで雫の細い肢体が吹き飛びそうなアンジェラの猛攻をかわしながら思案する。ここでアンジェラが丸太のような右腕を振り回し、雫に激突する寸前、雫は体をかがめてかわすと同時にラリアートの勢いで体の泳いだアンジェラの右腕に取り付き、飛びつき式腕十字固めにとった。


「ぎゃああああああああ~~!!!!」


 腕の関節をあらぬ方向に曲げられる激痛に絶叫するアンジェラ。しかし、雫も予想以上のアンジェラの怪力に密かに焦りを感じていた。


(なんて力‥‥‥!!後もう少しで完全に極まるところだったのに!!)


 雫がアンジェラの右腕を空中で捉え、マットに引き倒すとき、アンジェラは力任せに右腕から雫を振り払おうとした。その結果、振り払われることはなかったが、雫の腕十字固めは完璧には決まらなかったのだ。
 このままではギブアップは奪えないと分かる以上、雫の判断は速かった。アンジェラがひときわ右腕に力を込めて雫をふりほどこうとしたその瞬間腕十字固めを解き放ち、意表を突かれて大きな隙を作ったアンジェラの両腕をとり、すぐさま丸め込む。


「‥‥‥!?なーーーっ!?」


 アンジェラが気付いたときには、アンジェラの両腕と右脚は雫に固められ、自由に動かすことができるのは左足だけとなっていた。


「ワン、ツー、」


 アンジェラが丸め込まれたことによりレフェリーのカウントが進む。慌ててかろうじて自由になる左の膝で雫を蹴って引きはがそうとする。


「くっ、くぅっ」


 アンジェラの膝蹴りで雫の細い肢体は激しく揺さぶられるが、雫は意地でもアンジェラを放そうとはしない。


「‥‥‥スリー!!!!」


 レフェリーのカウントが3つ入り、雫はアンジェラから体を離した。結果としてはフェアリーの圧勝だったが、その実アンジェラの予想以上の強さには冷や汗をかいただけに雫の安堵も大きい。
 両腕を広げ、胸を反らした雫に会場中から歓声が飛ぶ。しかし、それで収まらないのはアンジェラだった。


「あのガキ‥‥‥‥‥‥!!」


 自分のコーナーに戻ったアンジェラは、歯を噛み、拳を震わせながら雫を睨み付ける。


(まだまだこれからが本番という訳ね‥‥‥)


 まるで相手を睨み殺そうとするかのようなアンジェラの視線を受けながら、これからの前途を思い、ため息をつく雫だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


カーン!!

 2本目開始のゴングが鳴り響き、雫はファイティングポーズをとってアンジェラに向かっていく。


「‥‥‥?」


 両腕を振り回して捕まえようとするアンジェラに、それをかいくぐる雫。1本目と全く同じ展開に、雫だけでなく観客も不審に思い始める。そして、アンジェラとレフェリーの中に雫が来たとき、試合が動いた。


「ふぅぉっ!!」


 それまでタックル一辺倒だったアンジェラが突然パンチを仕掛けてきたのだ。とっさに横に飛び退いてそれを避けた雫だったが、レフェリーはそうも行かなかった。雫が視界を遮っていたため、レフェリーは何が起こったかもわからずにアンジェラのパンチでノックアウトされてしまった。


「えっ!?」


 思わず後ろを振り返ってしまった雫に、アンジェラの手が伸びる。


「ああっ!!放してぇっ!!」


 髪をつかまれて身動きのとれない雫に、アンジェラのボディブローが突き刺さった。それまでのうっぷんを全て込めた一撃は、雫の薄い腹筋をたやすく突き破る。


「う‥‥‥‥‥‥、うぷぅ‥‥‥」


 ただ一撃で雫の足は完全に奪われた。アンジェラにすがりつくようにしてかろうじてダウンを免れた雫だったが、アンジェラの攻撃はまだ終わりではなかった。今度は雫を首相撲にとり、痛烈な膝をぶち込む。腹部、胸をアンジェラの膝で打ち抜かれ、20発も打ち込まれた雫はダウン寸前の状態だった。


「ふん、これで終わりと思ったかい?まだこれからさ!!」


 腰が砕け、崩れ落ちる雫の顔面に、狙いすました右のスマッシュが打ち込まれた。フェアリーの肢体が文字通りに吹き飛びロープに腕を引っかける形で止まった。


「ぅく‥‥‥‥‥‥ッ」


 すでに意識も朦朧としているのだろう。そのまま前に崩れ落ちようとするが、それをアンジェラは許さない。大きくためを作り、渾身のボディブローが雫のボディに突き刺さる。


「おぼぉ‥‥‥っ!!」


 雫の両足がボディブローの衝撃で浮かび上がった。大きく開いた口から胃液が飛び散る。


 どぼぉっ!!


 さらにアンジェラのボディブローが打ち込まれる。今度は踏みとどまることもできず、顔面からダウンしようとする雫。


「これでとどめにしてあげるよ!!」


 倒れ込もうとする雫の頭部を脇に固め、ヘッドロックで締め上げる。
 大人と子供に等しい体格差のアンジェラの渾身の締め付けは雫の頭蓋を軋ませ、フェアリーは激痛のあまりあっという間に失神した。


「おら、一丁上がり」


 アンジェラが足で雫を仰向けにひっくり返すと、無惨にも白目を剥いて失神しているのが明らかになった。
 ようやく立ち上がったレフェリーが10カウント数えたが、雫はぴくりとも動かず、あえなくKO負けとなった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 1勝1敗のイーブンとなった両者だが、まだまだ余力を残しているアンジェラと比較して、可哀想なほどに雫はダメージを負っていた。
 悠然と歩み寄るアンジェラに対し、ふらふらとファイティングポーズをとろうとする雫。第3戦のオープニングヒットは雫からだった。


「行‥‥‥くぞ‥‥‥‥‥‥!!」


 まだ第2戦のダメージが抜けきれない体に鞭打って、雫はロープの反動を利用してドロップキックを繰り出した。


「く、うっ!?」


 速さもなければ高度もない低空ドロップキックだったが、油断していたアンジェラの膝をめがけて打ち込まれたそれは、余裕を見せていたアンジェラの顔を苦痛に歪ませるには十分だった。


「こっの、ガキィッ!!」


 しかし、雫の攻撃もそれまでだった。立ち上がり、もう一度ドロップキックを放とうとしたそのとき、アンジェラの驚異的な踏み込みから放たれたラリアットが雫を吹き飛ばした。


「あ゛うっ!?」


 成す術無く雫の肢体が宙を舞い、そして重力に引かれてマットに叩き付けられる。


「ちょろちょろと目障りだからねぇ。まずは羽根をもぎ取らせてもらうよ!!」


 うつぶせに倒れた雫の首の後ろを押さえたアンジェラは、もう片方の腕を頭上に上げ、拳を握りしめる。雫の華奢な肢体と比較すればあまりにも凶悪なそれを、雫の命綱である足をめがけて振り下ろした。


 めりぃっ!!

「あああああああああああああああぁぁぁっ!!!!」


 雫の左太股に、アンジェラの右拳が深々とめり込んだ。雫の体が反り返り、上げられた顔は容姿が秀麗な分、あまりにも悲痛に歪んでいた。大きく見開いた瞳に、口が裂けるのではないかと思うほどに開かれた口、そして足が破壊される苦痛からの絶叫。


「ふふん、良い声で鳴くねぇ。今日は声が嗄れるまでつきあってあげるよ!!」


 雫の絶叫ににんまりと口を歪めたアンジェラは無慈悲に拳を振り下ろす。


「あぁっ!!あぎぃっ!!あ、足‥‥‥くひぃ!!私の足がぁ‥‥‥‥‥‥」


 2発、3発‥‥‥、振り下ろされるごとに悲鳴が上がり、雫の右脚が破壊されていく。染み一つない綺麗な脚線美を誇る雫の美脚が、アンジェラが手を休めるときには無惨にも紫色の内出血で染め上げられていた。


「ぐうぅ‥‥‥」


 鈍痛をこらえながら、それでもアンジェラを睨み付ける雫。雫の気の強さが気に入ったのか、アンジェラはにやりと笑い、雫の髪を鷲掴みにし、立ち上がらせた。


「こ、このぉ‥‥‥‥‥‥‥」


 右脚は手ひどく痛めつけられたものの、左足はまだ無事であるため、かろうじて自力で立つことはできる雫。気力を振り絞ってアンジェラの拘束から逃れようとするが、その瞬間、とっさに両腕をお腹の上で組み合わせた。


 ごっ!!

「ふぶっ!?」


 両腕のガード諸共雫のボディにめり込んだのはアンジェラの鉄拳だった。とっさのガードもアンジェラの前では紙のようにもろかった。


「まだまだいくぞ、しっかりガードしなぁっ!!」


 アンジェラのその言葉に、雫は必死にガードを固めるが、暴力の嵐の前に、そのガードはもろくも崩れ去った。


「あ、あぐぅっ!?」


 先ほどの一撃で痺れた腕をめがけ、アンジェラのパンチが殺到する。そして、ガードは弾き飛ばされ、雫のボディにアンジェラのパンチがまともにめり込む。目を大きく見開いた雫はとっさに口に手を当ててこみ上げる吐き気を何とか飲み下す。


(これ以上の醜態はさらせない‥‥‥!!何とか、何とかこの場をしのぎきる‥‥‥!!)


 左足は潰され、持ち前の身軽な動きを奪われた雫だが、その闘志はまだ消えてはいなかった。
 アンジェラの渾身の右フックが立つのがやっとの雫に向けて放たれた。この一撃が決まればこれまで驚異的な粘りを見せてきた雫も立つことはできないだろう。


「なぁっ!?」


 しかし、その必殺の一撃は空を切った。そしてアンジェラの意識はその瞬間の後、あごに衝撃を受けた時点でとぎれた。


 ごっ!


 身をかがめてアンジェラの右フックをかわした雫は、カウンターの掌打をアンジェラのあごに命中させたのだ。目に見えてアンジェラの顔が弛緩し、足腰が砕ける。
 雫の反撃に、必死になって声援を送っていたファンの歓喜が爆発した。轟々と観客の声援で会場が揺れる中、最後の力を振り絞った雫のジャーマンスープレックスでアンジェラが投げ飛ばされた。


「レ‥‥‥フェリー、‥‥‥‥‥‥カウント‥‥‥!!」


 左足はもう感覚もないが、雫はバックドロップホールドの体勢を留めていた。レフェリーのカウントが入る。それには観客の声ものせられていた。


「ワーン!ツーゥ!!スリ‥‥‥!!」


 しかし、スリーカウント寸前でアンジェラが肩を上げた。


「あーーーっ!!!!」


 会場中の観客が失望の声を上げる。
 このままダブルノックアウトか、と思われたが、雫がダウンカウントをとられるより先に動きだした。のろのろとした動きだが、観客の声援に応えるように確実にアンジェラの首に腕を回し、そして胴締めチョークスリーパーの体勢にはいる。


(終わって!!これで‥‥‥終わって!!)


 完璧に体勢は決まっているが、これまでのダメージで体に力が入らない。ここで、アンジェラがゆっくりと立ち上がろうとする。仰向けの状態からうつぶせに転がり、四つんばいになって立ち上がろうとする。


「く、うぅ‥‥‥。ここで‥‥‥ここまで来て‥‥‥‥‥‥、負けられるか‥‥‥」


 体を後ろにそらしてアンジェラの首を締め上げる雫。そして、のろのろと立ち上がろうとするアンジェラ。膝立ちになり、ゆっくりと立ち上がるアンジェラに、雫の絶望が次第に深まっていく。


(そ、そんな‥‥‥。ま、負ける‥‥‥‥‥‥?負けられないのに‥‥‥‥‥‥!!まだ倒れるわけにはいかないのに‥‥‥‥‥‥!!)


 ここでチョークスリーパーが引きはがされれば雫にはもう抗う力は残っていない。絶望に身を焼かれながら、それでも一縷の望みをかけてチョークスリーパーを維持する雫だったが、彼女を待っていたのは奈落の底への浮遊感だった。


「あ‥‥‥‥‥‥」


 アンジェラが完全に立ち上がり、そのまま後ろに倒れ込んだのだ。
 観客の悲鳴が会場に響き、両者とも動かなくなった。


(あ、あぁ‥‥‥?私は‥‥‥‥‥‥確か‥‥‥、‥‥‥ッ!!ま、負けた‥‥‥!?負けちゃった‥‥‥‥‥‥!?ううん!!まだ!!)


 両者ともピクリとも動かずレフェリーがダウンカウントを取り始める。


「ダウ~ン!!ワン、ツー‥‥‥!」


 しかし、ここで雫の体がピクリと動いた。次いで、ばたばたと、腕を動かし、立ち上がろうと藻掻く。観客の声援に、試合がまだ終わっていないことを悟り、なんとしても立とうと足掻いているのだ。


「おぉーーっ!!!!」

「立てーっ!!立ってくれーっ!!ここまで来たら勝ってくれぇーーーっ!!!!」


 観客の、声援を通り越した絶叫が雫の今にも崩れ落ちようとする体を支える。


「く、くあぁ‥‥‥‥‥‥!!」


 リングロープにたどり着き、しがみつこうとしてマットに崩れ落ちる。そのたびごとに観客が嗄れたのどに鞭打って声援を送る。


「ファイブ‥‥‥シックス‥‥‥!!」


 レフェリーのカウントが進む。ここで、アンジェラも意識を完全に取り戻すまでには至らなかったが動き始めた。
 既に悲鳴のような観客の絶叫にレフェリーのカウントもかき消されがちだが、雫もアンジェラものろのろと立ち上がる。リングロープにすがる体勢で雫が立ち上がることに成功した。しかし、ここからファイティングポーズをとらなければダウンしていると見なされてしまう。


「セブン、エイト‥‥‥‥‥‥!!」


 アンジェラがひじを突いたまま体を起こそうとしてそれ以上動けない。雫は両腕を震わせながらじりじりとファイティングポーズをとろうとする。


「‥‥‥ナイン‥‥‥‥‥‥!!」


 ここで、アンジェラがマットに崩れ落ちた。雫は両腕を顔の前に構えたまま立ちつくしている。レフェリーが頭上で腕を交差させ、試合終了を告げた。10カウントは入っていない。フェアリーの大逆転勝利だ。
 どっ!!と、観客の声が飽和した。その中、勝ち名乗りをさせようとして雫に近づいたレフェリーが慌てて担架を呼ぶ。
 勝者、敗者ともに担架で運ばれ、メインイベントは終了した‥‥‥‥‥‥。



 勝者の雫は、結局左足や内臓に多大なダメージを受けたことで2週間入院することとなった。敗者のアンジェラは、雫に比べ、ダメージは軽く、病院にも通わないままリングで暴威を振るっている。


「‥‥‥もう何度も駄目だと感じました。もう体が動かない、もう勝ち目なんて無い、と‥‥‥。でも、そのたびごとにファンのみなさんの声援が届きました。私が勝った理由はただ一つ、ファンのみなさんの声援に背中を支えられていたからです‥‥‥‥‥‥」


 入院中の雫の勝者インタビューだったが、アンジェラから受けたダメージで、パジャマの端々から包帯が除き、痛々しさを見せていた。しかし、雫の表情は清々しいものがあった。アンジェラという怪物を相手に、それでも自分の心は折れることはなかったことが自信となっているのだ。



 しかし、それも入院1週間を過ぎるまでだった。
 テレビの中では、敗北寸前まで雫を追いつめたアンジェラが、血塗れとなって失神していた。そして、血に濡れた凶器を握りしめていたのは‥‥‥。


「雫!!テメェがやっとこさで倒した奴は今こうなってるぜ!!テメェのレベルはこんなもんだ!!覚悟しておけ!!次の相手はおまえに決まったぜ!!次はおまえがこいつみてぇになる番だ!!」


 かつて、雫にとってどうしても越えられなかった壁、ヒール軍のトップ、そして前回のフェアリーとの対戦以来、行方のしれなかったブラスター狂子だった。
 その翌日、雫はブラスターとの対戦が本当に組まれていたことを知る。雫が退院して1ヶ月後の対戦、それはノーレフェリーノールールのデスマッチだった。



 あまりにも過酷な対戦、そして過去最大の相手に、雫は女子プロレス界に名を残す大激戦を繰り広げることとなるのであった‥‥‥‥‥‥。

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