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リングの妖精1

「ああああぁぁ~~~~~~っ!!!」


 悲痛なまでの絶叫が会場内に響き渡る。
 リング上では、相撲取りかと見間違えんばかりの怪異な女が水色のコスチュームを身につけた華奢な女性の足をアキレス腱固めで締め上げていた。


「が、がんばれ雫ーっ!!」


 場内から悲鳴のような声援が上がるが、雫と呼ばれた女性は締め上げている太い腕を弱々しく蹴るばかりで抜け出せそうに無い。


「月嶋、ギブ?」


 レフリーが雫に問い掛ける。


「・・・・ノ、ノぉぉ~~~・・・」


 弱々しい視線をレフリーに向けて、それでもレスラーとしての本能からか、ギブアップを拒む雫。
 しかし、レフリーに焦点はあっておらず、レフリーは試合を止めるかどうかを迷ったところで、まるで飽きたというように怪女が雫の脚を離し、立ち上がった。


「ね~~~ぇ、雫ちゃ~~ん。こないだの大口はどこ行ったのかなあ~~?そんなところで寝転がっ
てないでそろそろ本気出してよ~~~ぉ」

 雫の弱々しく倒れ伏している姿を嘲りながら怪女は余裕たっぷりに立っている。



 ここは、とある場所の体育館。
 プロレス団体に似合わない美貌の女子選手や反則攻撃を得意とするヒールレスラーを中心に構成されたこの団体は熱狂的な支持を得ていた。
 ビューティー・プロレスリング・アソシエーション(通称BPWA)はその人気から、当然のごとく武道館のような大きな会場を押さえる事を押さえ、そのチケットの売れ行きは毎回立ち見客が出てくるほどのものであった。
 雫雫は、アイドル顔負けのその美貌と抜群のプロポーションで美人が多いBPWA所属の女子選手の中でもずば抜けた人気を誇っていた。19歳の若さにして人気・実力ともBPWA正規軍の中で自他ともに認めるトップであった。
 しかし、それは正規軍の中であって、ヒール軍団は、その性質から、ウェイト、パワー、スタミナ、そのどれもが正規軍女子を大きく上回っていた。
 雫も例外ではなく、新米ヒールならばともかく、ヒール軍団の上層部には、連戦連敗という無残なありさまだった。
 そして、今雫と闘っているのは、ヒール軍団、狂獣連合のトップ、ブラスター狂子だ。その容赦ないファイトスタイルと、女子の範疇を超えたパワーと体格によって、女子プロレス界最強の名をほしいままにしている。しかも、対戦相手は誰もが入院を免れず、リング外においてもやりたい放題というありさまだった。
 そんな狂子の独裁体制に弱々しくだが歯向かってきたのが雫率いる正規軍である。もともとまじめで正義感の強い性格であるため、事あるごとにヒール軍団と衝突してきた。何度も入院することになったが、不屈の闘志を見せて今なおヒール軍団と闘い続けている。
 そんな雫に、ヒール軍団の牙城を切り崩してほしいというのは、団体、ファン、共に共通の願いである。



 しかし、その願いも虚しく、雫は汗まみれになって、虚ろなまなざしを天井に向けたまま大の字になって倒れている。
 いや、弱々しくだが、身を起こそうともがいている。


「雫、やれるか?」


 レフリーが立ち上がるのもつらい状態の雫の身を案じて尋ねる。


「・・・はい、・・・・やれます・・・・」


 その返答の遅さに懸念を抱かないではなかったが、雫の頑固さは良く知っているレフリーは、ファイティングポーズを取れるか確かめようとする。


(立たなきゃあ・・・・、今度こそ負けられない・・・・!!)

「くう・・・あああぁぁ~~~~~っ!!」


 絶叫して立ち上がる雫。
 しかしその闘志も虚しく、立ち上がった雫の目の前に迫ってきたのは狂子の手の甲だった。


 ゴッ!!


 鈍い音がして、雫の首が捩じれる。


「あぁ・・・・・」


 完全に意識が飛んだのか、糸の切れた人形のように後ろに倒れこもうとしながら、それでもロープに持たれ込んで倒れるのを拒否しようとする雫だったが、とどめに狂子の必殺技である大振りのラリアット、ブラスティング・アックスが雫の細首に叩き込まれ、場外に吹き飛ばされた。
 場外に落ちた雫をレフリーが見たが、雫は無残にも白目を向いて失神している。
 慌ててゴングを要請するレフリー。

 カンカンカンカーーーン!!!

 ゴングが鳴り響き、試合の終わりを告げる。

『28分36秒、雫雫の場外失神よりブラスター狂子のTKO勝ちとなります』

 注目の一戦は、雫の無残な場外失神TKOで幕を閉じたのだった。



 勝ち名乗りを上げながら、場外の雫を覗き込む狂子。そこではちょうど、雫が目を開けるところだった。


「くう・・・・っ、ま、まだぁ・・・・っ」


 場外でKO負けをしたことを当然覚えているはずも無く、今までに受けたダメージで頭に霞みがかかったような状態で、それでもレスラーとしての本能からか、リングに戻ろうとする。
 しかし、狂子は、無慈悲にも突進してくる雫を抱え挙げ、リフトアップした。
 勢いのまま狂子にかかっていった雫だが、次第に頭の中の霞みが晴れてくるにしたがって、自分が負けたことを自覚する。


「は、放せっ!!このおぉっ!!」


 内心では恥も外聞も無く泣き叫びたかったが、それでもプロレスラーとしての誇りがそれを許さなかった。
 狂子によって、2メートル以上の高さまで持ち上げられた雫は、うつ伏せのままリングに落とされた。お腹を抱えて悶絶する雫に、狂子が嘲笑を浴びせる。


「これで分かったろ、身の程ってのがね。綺麗な玩具は玩具らしくしていればそれなりに大事に扱ってやるからね。アーッハハハハハ!!」


 屈辱に身を震わせ、狂子に食って掛かる雫。


「まだだっ!!まだギブアップは言ってない!!もう一度、・・・もう一度私と闘えぇ~~ッ!!」


 再戦を叫ぶ雫に、押しつぶすような視線を向ける狂子。取り巻きは、何を馬鹿なことをと言っているが、狂子は少しばかりの思考の後、それを受けた。


「いいぜ、やっても」

「それじゃあ・・・っ!!

「ただし、条件がある。それが飲めないんだったらやめるよ」

「何、その条件は?」


 正規軍の後輩は、雫を引き止めようとするが、もう止まることは出来なかった。それが地獄に続くとしても。


「たいしたことじゃないさ、ただ次の試合形式をあたしに任せるってだけでね。飲むかい?」

「飲むわ!!」


 躊躇無く答える雫。


「おおっし!!じゃあ次の対戦は1ヵ月後だ!!思い残すことのないようにしておけよ!!」


 唇をかんで狂子を睨み付ける雫。1ヵ月後に何が起こるか、たとえ何があっても一矢報いなければならないと、心に誓い、リングを後にした。

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