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短編上がりました~♪

またまたしばらく間をおいてしまいましたが、短編が出来あがったので投稿します。いつものように女性がいたぶられる展開ですが、今回の相手は残虐ヒールではないですね。
女王と女神

 ここはアメリカの某所。世界一を誇るコロシアムで世界統一王座とプロレスラーの誇りをかけて二人の女戦士が激突する。
 挑戦者は極東の島国出身の若き女王。そして迎え撃つのは世界最強と呼ばれる無敵の女王。デビューして以来常にKO勝ちを収め、あまりの強さに挑戦者すらなかなか現れず、次の王者が現れるのは彼女が引退してからだとすら言われるほどの怪物だ。
 そんな彼女に久しぶりの挑戦者が現れると言うことで観戦チケットは完売、裏ではこの試合のチケットを手に入れるために巨額の金銭が飛び回っている。

 
 真っ暗になっていた試合会場の片隅をスポットライトが照らし出す。


 どおおおおおおおっっっ!!!!


 広い場内に、とどろくような声が響き渡る。それも、好意的な声ではない。ほとんどがこれから出てくる女性に対するブーイングだった。
 入場してきたのは、長身の美女だ。彼女の名は河村美沙希。鴉の濡れ羽色の髪が歩みに合わせてたなびき、艶かしい女の白肌が離れていても確認できる。清楚な白いコスチュームに身を包み、痩身に似合わぬ戦闘能力を秘めている。その美しくも幻想的な姿は、神話世界の戦女神を思わせた。
 その立ち姿は凛々しいが、プロレスラーとしてはあまりに華奢で、そして可憐に過ぎる。だが彼女こそ、日本女子プロレス界の若き女王にして日本女子プロレス界の悲願である世界統一王者ベルトに初めて挑戦する希望の星だった。
 年の頃は二十前後だろうか、モデルを思わせる抜群のスタイルが目を引く。四肢はすらりと長く伸び、くびれた腰は折れそうなほどにか細かった。だが美女の身体は、ただ華奢なだけではない、スタイリッシュに引き締まった肢体は、同時にたっぷりと媚肉をつけた蠱惑的なものなのだ。
 むちむちと張り詰めた豊乳は、Dカップは下るまい。溢れんばかりに柔肉を実らせながらも、釣鐘型に美しく整って若々しい張りを見せ付けていた。長い美脚はしなやかに肉をつけ、抜群の脚線美を誇っている。瑞々しく輝く太ももの白さが、夜闇でも眩しかった。むっちりと成熟した胸房や尻峰は、細身のラインゆえにいっそう質量を強調して見せている。スレンダーで格好よい長身に、成熟した女の魅力を実らせた極上のボディ――まさに理想の大人の体型だった。
 そんな大人びた魅身を包んでいるのは、幻想的な白いコスチュームだ。
 ぴっちりしたロンググラブが肩口から指先までを覆い、大きく飛び出した両のパフショルダーを薄い襟布が繋ぎとめている。奇妙な上着は極めて露出度が高く、短い首襟は乳峰のふもとを僅かに隠す程度の面積しかなかった。結果、白衣を押し上げるように膨らんでいる美巨乳は、豊かな胸肉の殆どをあらわに曝け出してしまっている。細い胴を締め上げるように覆っている黒のインナースーツが、辛うじて下乳に被さり乳首を隠していた。
 黒いスーツの上からは純白のドレスが被さり、花弁状に意匠されたインナーの露出部分と鮮やかなコントラストを描いている。ドレスのスカートには大きなスリットが開き、たっぷりと肉を付けた太ももを悩ましく露出させていた。細く伸びた前裾が股間を隠し、スカートの後部はマントのように広がって地面にまで垂れている。白いリングシューズが膝下までを守り、悩ましい脚線を麗しく飾り立てていた。


「ついにここまで来た‥‥‥。お母さん‥‥‥。必ず、必ず私は勝ちます‥‥‥!」


 鋭い視線でチャンピオンの入場してくるコーナーを貫き、決意を秘めた口調で宣告する美沙希。成熟した肢体に相応しく、美沙希の美貌も大人びたものだった。顔の輪郭は細く上品で、端正に整った麗貌はいかにもクールで格好いい。腰にまで届く見事な長髪は、鴉の濡れ羽色にしっとりと輝いていた。切れ長の瞳には、誰が相手であっても決してくじけることのない強い意志が輝いている。綺麗に整いながらも強靭な意志力を感じさせる麗貌は、まさに戦女神と呼ばれるに相応しい。
 しかし、彼女の人気はそれだけではない。リングを降りれば戦闘中の緊張感は消え、どこか間の抜けた、優しくふんわりとした空気が場を包む。ともすればきつい印象を受ける凛姿とは裏腹に、彼女はおっとりとした柔和な性格の持ち主なのだ。
 そんな美沙希がプロレスラーとしてリングに上がることを誰もが不思議に思う。人と争うようなことが好きではない彼女がなぜプロレスラーになったのか。
 彼女の脳裏をプロレスラーの道を歩む契機となった出来事が甦る。それは古いビデオ、彼女の母が事故死し、遺品を整理していた際に見つけた物だった。母を慕う少女はそれを何とは無しにビデオデッキに差し込んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 少女の前の画面の中で一人の女性が血にまみれた姿で横たわっていた。若々しく、美しく、そして優しい自慢の母が血の海に倒れている姿は少女にとってあまりにもショッキングなことだった。
 母がプロレスラーだったこと、そして引退して自分を生んだことまでは美沙希も知っていた。しかし、静香は娘に自分の過去を深く教えようとはしなかった。
 マットに倒れているのはクイーン静香。女子プロレスの一時代を担い、数々の名勝負を残したレスラーであった。涼しげな美貌と抜群のスタイルに、華のあるレスリングと、若くはあったが1線級のトップレスラーとして活躍していたことを後で美沙希は知った。
 もしも国内だけで活躍していれば静香のたどる道も違ったことになっただろう。しかし、世界統一王座に挑戦したことが静香の運命を狂わせることになったのだった。国内随一の強さを誇る静香に国内のファンは世界統一王者ベルトの獲得の期待を持った。しかし、その期待とは裏腹に、この試合のすぐ後に静香は引退し、結婚、出産、そして夫との死別を遂げることとなる。


 若さに溢れ、恐れを知らなかった若きプロレスラーを待っていたのは世界の広さと奥深さだった。
 当時の世界統一王者は、静香の正統派レスリングをその怪力で潰し、凶器攻撃で静香の体力を削り、額から流れる鮮血で全身を赤く染めた静香はあまりにも分厚く高い壁に心を折られたのだった。
 ピクリともせずマットに横たわった静香の美貌はなおも流れる鮮血で汚れ、艶やかなロングヘアも血にまみれてごわごわに固まっていた。すでに誰が見ても勝負は決まっているのだが、王者は容赦なく静香を抱え上げ、コーナートップに座らせた。静香の腕は力無くぶら下がっており、意識があるかも怪しいが、王者はかまわず自分もコーナートップに立つと、雪崩式のバックドロップで静香の肢体をマットに突き刺した。


 ズズーン!!


 危険な角度で真っ逆様にマットにめり込んだ静香の体は勢いのままにマットにしりもちをついた体勢となり、しばらくそのまま。そして、3秒その体勢のまま動かなかった静香は糸の切れた人形のようにマットに倒れ込んだ。


「うっうっ、うっ」


 マットに倒れた静香は白目を剥き、泡を吹いて手足が痙攣を起こしている。見るからに危険な状況に、試合終了のゴングがうち鳴らされた。
 あまりに一方的だった試合内容に、応援していた静香のファンが沈黙している。そして対戦相手は沈黙した観客席をあざ笑うように、静香の顔を踏みにじりながら勝ち誇ってアピールする。
 凄惨としか呼びようのないその試合に、美沙希はなぜ静香がカムバックしようとしたのかその理由を知った。何気なく母の過去を自分が尋ねたことが、母が記憶の奥底に沈めていた悪夢をさらけ出したことを。
 しかし、母は言った。自分が愛娘が誇れる姿を見せたいから今リングに復帰するのだと。このとき、美沙希に将来の道ができた。プロレスラーとなり、母のなしえなかった世界統一王者のベルトを勝ち取ることを。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 過去を追憶していた美沙希が割れるような歓声に現在に引き戻された。自分とは反対側のコーナーから入場してくる人影。現世界統一王者のアテナだ。
 女性らしい体型の美沙希とは違う、筋肉質の体をラバースーツに包んだその肉体はまさに鋼と言っていいだろう。体つきはギリシア神話の男神のようにたくましく、しかし女性であることを如実に表し、そして戦神のように鋭く敵を射抜く硬質の美貌には、戦女神アテナほどふさわしいリングネームはないだろう。
 身長は2mを遙かに越え、体の厚みは美沙希の倍以上、二人が並んだだけで勝負は最初から見えてしまっているように見える。
 悠然と入場してきたアテナが片腕を掲げると、観客がその動作にわっと沸いた。観客たちはこの最強の王者を誇り、身の程知らずにも王者に挑戦しに来た東洋の小娘にブーイングを浴びせる。
 完全にアウェーの雰囲気にセコンドに付いた同僚が不安げに周りを見渡すのにかまわず美沙希はアテナを鋭く睨んでいた。アテナも最近見なくなった活きのいい挑戦者を楽しげな目で見ている。

 レフェリーの紹介、選手紹介を経て、いよいよ勝負開始のゴングが鳴らされる。会場が緊迫した空気に覆われる中、美沙希とアテナはリング中央で握手を交わした。


「よろしくお願いします!」

「ふふふ、お譲ちゃん。ベルトを持って帰れないことは分かってるだろう?」


 その言葉に応えず美沙希は握手を解くと自分のコーナーに戻った。アテナはフッと笑うと自分のコーナーに戻る。


 カーン!!


 ゴングが鳴り響いた。両者はコーナーから離れて互いの出方を待った。体格とパワーに優れたアテナと、スピードと技に秀でた美沙希。試合は美沙希が動き回り、アテナがそれを迎撃すると誰もが思っていた。


「おおお!!」


 しかし、予想を裏切り先に動いたのはアテナだった。その巨体からは想像もできないほど素早いショルダーアタックで美沙希を吹き飛ばそうとする。


「なにっ!?」


 しかし、激突の瞬間にアテナは美沙希を見失う。そのままロープの反動を利用して後ろを振り返るとそこにはまるで重力を無視したような軽やかな動きでマットに着地する美沙希の姿があった。アテナのショルダータックルが命中する瞬間、その場でジャンプし、アテナの上を跳び箱を跳ぶようにしてやり過ごしたのだ。


「ちぃっ!!ちょこまかとっ!!」


 普通の相手なら一撃でKOできる攻撃をかわされ意表を突かれたが、アテナも世界チャンピオンだ。ロープの反動を利用し、今度はラリアートで美沙希の首を刈ろうとする。
 しかし、こんどはしゃがんだ美沙希がアームホイップでアテナを投げ飛ばした。


 ずーん!!


 アテナの巨体がリングを揺るがすが、アテナにダメージは見受けられない。


「面白いね‥‥‥!!」


 怒るよりもむしろ楽しそうな笑みを浮かべて立ち上がる。

 ‥‥‥試合開始から15分が経過し、パワーで攻めるアテナに対し、スピードと技でそれを返す美沙希。底なしのスタミナを見せ、美沙希を攻め立てるアテナだが、美沙希はその全てをかわし、反撃し、試合のペースは美沙希に握られていた。
 試合序盤はアテナに声援を飛ばし、美沙希にブーイングを浴びせた観客も今ではすっかり声を出さなくなっている。対照的に、日本から美沙希を応援しに来たファンたちは美沙希の優勢に歓声を上げていた。


(いける!!このまま‥‥‥!!このままなら、世界が!!)


 さすがに疲れが出てきたのだろう、動きの鈍くなったアテナの背後に回り、ジャーマンスープレックスで投げ捨てようとする。
 しかし、美沙希のジャーマンは不発に終わった。ジャーマンで投げられる寸前、その勢いを利用してその場でジャンプしたアテナはそのまま回転して美沙希の背後に回り、勢い余って体を泳がせた美沙希の細い腰に腕を回す。


「これまで良い夢を見れたかい?さぁ、ここからは現実の時間だよ‥‥‥!!」


 そしてそのまま美沙希をジャーマンスープレックスでアテナが投げる。長身のアテナの繰り出すジャーマンスープレックスは、美沙希を3mもの高さまで抱え上げ、勢いよくその高さからマットをめがけて急落下する。


「‥‥‥‥‥‥え?」


 状況の変化に付いていけない美沙希は自分の視点が急激に変わっていくことに対応できないままライトのまぶしい天井を見上げる。
 そして急落下!!一気にライトが遠ざかり、ようやく美沙希は自分がとんでもない高さから投げられていることに気付くがそのときにはもう遅かった。


「え?え?あ、あぁーーーーーっ!!!!」

 ずずーーーん!!


 美沙希がほとんど垂直な角度でマットにめり込む。アテナがホールドを解いても、まんぐり返しの体勢のまま動かない。


「薬が効きすぎたか。もうちょっとつきあってもらうよ」


 アテナがダウンした美沙希を軽く蹴ると、脱力した美沙希の肢体はぐにゃりと曲がり、そのままうつぶせになった。身動きする気配を見せない美沙希に、日本からの応援団が悲鳴を上げ、アテナのファンが歓声を上げる。
 アテナはダウンした美沙希の髪をつかんでそのまま美沙希のコーナーへと投げつける。力無く垂れ下がった美沙希の体はそのままコーナーポストに激突し、コーナーの根本でまるで壊れた人形のように横たわった。


「美沙希!!大丈夫、美沙希!!」


 セコンドが美沙希の容態を心配して駆け寄る。艶やかだった美沙希の髪が乱れ、美沙希の顔を隠しているのをかき分けると、美沙希は呆然と目を開いたまま泡を吹いていた。
 慌てて美沙希を介抱するセコンド。これまでの攻撃は、美沙希を良く知る彼女らから見ても最上級のものだった。しかし、アテナはその攻撃を喰らって平気なばかりか、むしろ不満そうに見える。


「ちっ、やりすぎだぞ、アテナ。せっかくあれだけ活きのいい獲物が来てくれたんだ。ちゃんと観客の期待に応えてくれないと困るぜ」

「悪かったよ。つい、楽しくてね。これまで全然おもしろみのない奴らばかりだったからね。あの目はまだまだ闘える奴さ。たとえ、勝ち目がないとしてもね‥‥‥‥‥‥」


 アテナのセコンドは対角コーナーの美沙希の陣営を見て、ひょっとしたらここで試合終了になってしまうのではないかと懸念する。実際、日本最強の美沙希がアテナの一撃で瞬殺という現実に、このまま試合を放棄する案も出始めていた。
 しかし、会場の観客がそれを許そうとしない。もしもそれを強行しようとすれば自分たちは無事に帰れるかどうかの保証もできない。


「まだよ‥‥‥。まだやれるわ‥‥‥」


 怖じ気づいた日本勢の中、只一人美沙希だけはまだ闘志を失っていなかった。痛打した後頭部を押さえ、ゆっくりと立ち上がる。


「もう止めろ!!あの化け物は遊んでただけだったんだぞ!!殺されちまうよ!!」


 引き留めようとするセコンドを振り切り、アテナに立ち向かう美沙希の姿に、会場の観客が歓声を上げた。日本からの応援団はその狂熱の中、身を縮めて怯えている。ここに来て美沙希は自分が自ら処刑場に足を踏み入れたことを悟った。ビデオで見た母のように、自分もまた目の前に立ちはだかるアテナによって夢を目前にして倒れるのだと。


「‥‥‥でも!!まだ決まった訳じゃない!!勝ち目なんて無くても‥‥‥!!私は勝つ!!」


 美沙希の姿が白黒の疾風となってリングを駆け抜ける。パワーもスタミナも遙かに自分の上を行くアテナに対抗するため、小手先の技に頼らずスピードで勝負に出たのだ。


「おぉっ、まだまだ元気だ」


 わざとらしく驚いた顔をするアテナが美沙希の突進に合わせ、カウンターで体当たりを喰らわせようとするのをついさっき失神KO寸前まで追い込まれたとは思えないほど軽少な動きでかわした美沙希が体勢を崩したアテナにローリングソバットを蹴り込もうとする。


「なっ!?」


 しかし、美沙希が自信を持って放ったローリングソバットはあえなく空を切った。体勢を崩したはずのアテナが美沙希をしのぐほどの素早い動きでローリングソバットをかわし、お返しのアテナのローリングソバットが美沙希の横顔を蹴り飛ばす。


「おぶぅ‥‥‥っ」


 これまでに味わったことのないとてつもなく重い一撃で、美沙希はもんどり打ってマットに倒れ伏した。さっきのソバットで口を切ったのだろう、その口元からは鮮血がしたたり落ちるが、美沙希の瞳からは闘志の炎が消えていない。


「ま、だぁ‥‥‥‥‥‥」


 最高のスピードで攻めながらもいとも簡単に返された美沙希は、それでも奇跡を信じてアテナに歩を進める。


「くくくっ、良いねぇ。やっぱり正解だったよ。あんたを挑戦者に選んだのは‥‥‥」


 ここ近年のストレスは、目の前に立つサムライ・ガールによって完全に払拭された。満足するまで美沙希ならつきあってくれる、その興奮に胸をふくらませ、アテナの巨体が軽やかなステップを踏み始める。


「な‥‥‥っ!?」


 美沙希は目の前で軽やかにステップを踏み始めたアテナの動きに目を見張った。自分よりも遙かに体格に勝り、体重もあるだろうアテナがまるで重力を無視しているような軽やかな動きをしている。


「くっ!!やあぁっ!!」


 底の見えないアテナの強さに圧されまいと、美沙希は先手を打った。鋭いステップインからの掌打でアテナを捕らえようとする。しかし、アテナはまるで目の前の巨体が幻であるかのように美沙希の攻撃を受け流す。


「良い動きだ、良い攻撃だよ。認めてあげるよ。でもね、今あんたの目の前にいるのは私だよ」


 アテナの変幻的な動きに食いついて、掌打を放つ美沙希。十分に掌打に注意がいったと判断した美沙希はそのままさらにステップインし、鋭いローキックでアテナの足を狙う。
 しかし、ローキックが命中する寸前、美沙希の顔面に衝撃がはじける。


「あうっ!!」


 アテナのジャブが美沙希の顔面を捕らえたのだ。そして、ジャブを当ててすぐに美沙希の反撃が届かない距離まで下がる。ヒットアンドアウェイの教科書のような動きだ。
 歯がみをしてアテナを睨み付ける美沙希だが、その内心は焦りを押さえきれなかった。


(私よりも速い‥‥‥?そんな‥‥‥‥‥‥)


 美沙希にとっての勝機、スピードとテクニック、この二つが美沙希の闘志を支えていた。しかし、スピードでさえ美沙希を上回るかもしれないアテナに、戦慄を隠せない。


「どうした?どうしたよ!!ほら、休んでいる暇はないよ!!」


 ひるみを見せた美沙希にアテナの猛攻が始まる。観客ですら分身して見えるほどのステップに鋭いジャブが美沙希に襲いかかる。しかし、美沙希も世界統一チャンピオンに挑戦するだけの実力は持っている。
 アテナのジャブをかわし、反撃の掌打を繰り出す。目まぐるしく美沙希の華奢な肢体と、アテナの均整のとれた魁偉な肉体が入れ替わり、打撃が飛び交う。
 しかし。


「くっ、ぐぅっ!?」


 水準を遙かに超えた時点で美沙希とアテナとの間には大きな実力差があった。美沙希の打撃はアテナに全て防がれ、アテナの打撃は美沙希に吸い込まれるように命中する。
 美沙希は意地を賭けて踏みとどまろうとするが、アテナの圧力に押されて後退するのを止められず、ついにマットに転倒してしまう。


「はぁ、はぁ‥‥‥‥‥‥」


 息を荒げた美沙希が四つんばいになってマットに這いつくばるのをうっすらと汗をにじませた程度のアテナが見下す。


「くぅっ!!」


 実力差がはっきりと現れた立ち絵に涙がこぼれそうになるのをこらえ、美沙希は遮二無二アテナに組み付いた。


「っと、今度はサブミッションか?いいよ、つきあってあげよう」


 アテナの腰にしがみついた美沙希はそのままアテナをマットに転がし、アキレス腱固めにとろうとする。しかしアテナも黙ってやられはしない。見事な動きで美沙希のアキレス腱固めを不発に終わらせ、美沙希を関節技に捕らえようとする。
 先ほどの打撃戦と同じくハイスピードの攻防だが、美沙希がアテナに捕われはじめるのを日本勢は顔を青ざめさせ、呆然としながら見守るしかなかった。


「くあああぁぁっ!!は、はやあああぁぁぁっ!!」


 関節技が極まる寸前でかろうじて逃げることが多くなってきた。闘志が絶望に押し潰されそうになるのをこらえながら美沙希が必死になってアテナから逃げようとする。


「逃がさないよ♪」


 しかし、アテナの不吉な宣告から逃げ切ることはできなかった。うつぶせになったところをのしかかられ、そのまま両手両足を絡め取られ、一気にロメロ・スペシャルが極められた。


「あ、あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 完璧に決まったロメロ・スペシャルに美沙希が絶叫を上げた。身体中の筋肉が絞られる苦痛に顔を歪め、耐えようとする。


「逃げようとしても無駄だよ。こいつが極まったらもう逃げることはできないさ」


 だが、美沙希の忍耐を嘲弄するアテナの声に、じわじわと絶望が美沙希の闘志をうち消しつつある。


「あ、あああ‥‥‥、うあああぁぁ‥‥‥‥‥‥」

(お母さん!!助けて、お母さん!!)


 さらに締め付けが増し、折れそうになる闘志を夢半ばにして倒れた母を思いだして耐える。


「聞いたよ。あんたの母さんもここで負けたんだってねぇ?母の遺志を継いで夢に向かう、か。泣かせる話だねぇ。でも、あんたに勝ち目はないよ。パワーも、スタミナも、スピードも、テクニックも‥‥‥。みんなあたしの方が上。いいんだよ、楽になって‥‥‥。認めればいいんだ。あんたの夢は決して叶わないってね‥‥‥」


「ば、馬鹿にしてぇ‥‥‥‥‥‥、ええぇ‥‥‥」


 絶望と全身を襲う苦痛に美貌を歪めながら耐える美沙希に声を無くすファンたち。まるで通夜の席のように沈鬱な視線が決定的な敗北を喫そうとしている日本の女王に集中している。


「さぁ、どうするっ!?」


 止めとばかりにアテナが美沙希の肢体をさらに絞り上げる。腕がさらにねじられ、豊かな胸が天井をむいてつんと突き上げられる。足もがばっと開かれ、大きく開かれた股間が観客席に向けて晒された。


「ああああああああああああああああぁぁぁっ!!!!いやぁ!!絶対にいやああああぁぁぁ!!!!」


 それでも美沙希の心はへし折れなかった。母の無念を晴らすことを誓い、同じ場所で倒れた母が決して言わなかった敗北宣言を言うことだけは全てを賭けて拒否する。敗北を目前にしながらそれでも誇りを失わない日本の女王に観客席のファンが感極まりすすり泣きを漏らした。


「何だって?何を言っているのか分からないぞ!!」


 これまでの挑戦者はここまで実力差を突きつけられれば全員が敗北を認めてきた。聞き間違えたかと、レフェリーが聞き返す。


「ギブなんてするかぁーっ!!負けてなんかやるもんかーーーっ!!!!」


 ついに美沙希が泣き出した。苦痛に、無力感に、そして屈辱に、こらえきれない涙が美沙希の瞳からこぼれ落ち、大きく開かれた口から嗚咽が漏れた。しかし、決してギブアップだけはしようとしなかった。


「ちぃ、頑固だねぇ」


 ロメロ・スペシャルから解放された美沙希がマットに横たわった。すすり泣く美沙希を眼下に、仁王立ちになったアテナが見下す。


「よく頑張るねぇ。でもね、あんまり意地を張ってると痛ぁい目を見るんだよ」


 びくん、と体を震わせ、怯えた目でアテナを見上げる美沙希にアテナが残酷に優しい声で言う。


「あんたの可能性をあたしは十分に試させてあげた。そう、絶対にあんたはあたしに勝てないことを証明してね。でもあんたはそれを認めようとしなかった。本当にむかつくねぇ。最近だとほとんどあたしに挑んでくるような奴がいなくてね。あんただと見栄えもいいし、実力もある。正直感謝してたんだよ、あたしは。でもね、いい加減弱っちいのにつきまとわれるとぷちっと踏みつぶしたくなるのさ」


 アテナの言葉が進むにつれ、美沙希の体がますます増大してくるプレッシャーに圧倒され震え出す。


「く、う・・・・・・なっ!?ああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 不吉な予感に襲われその場から距離を取ろうとする美沙希の前髪をつかんで逃走を阻んだアテナは美沙希ののど元を握り、そのままチョークスラムで叩き付けた。


「ご、ごぼぉっ、ごほっごほっ!!」


 アテナの、3mもの落差からの豪快なチョークスラムにリングが揺れた。その破壊力に、観客が思わず美沙希の身を心配するほどだ。幸いに、と言うよりも不幸にも、美沙希はしっかりと受け身をとり、立ち上がることができた。しかし、のどを強く圧迫されたことにより、咳がやまない。
 咳き込む美沙希に、今度はたっぷりと加速の付いたアックスボンバーが叩き込まれる。爆発物のような衝撃音が会場に響き、美沙希の肢体がまるで自動車に跳ねられたダミー人形のように吹っ飛ぶ。


「ふんっ!これでどうだい?」


 ぐしゃっ!と、危険な落方をして、マットに転がった美沙希を足下に、アテナが観客にアピールした。しかし、本来なら歓声が帰るはずなのだが、観客席はしん、としている。不審に思い、美沙希を見下ろすと、既に失神していると思っていた美沙希が、のろのろとではあるが立ち上がろうと藻掻いていた。


「なんってしぶといんだ‥‥‥」


 チョークスラムも、アックスボンバーも、アテナが全力を込めたものだった。その攻撃を喰らって美沙希は立ち上がった‥‥‥、が、そこまでだった。


「あ‥‥‥、やぁ‥‥‥‥‥‥!!」
 がくがくと全身を振るわせながらも立ち上がった美沙希が殴りかかるが、既にその体には力は残っていなかった。ぺちぺちと、あまりに頼りない音が立つばかりで、まるで子供が大人にだだをこねているようにしか見えない。


「ちっ!いいかげんにしないと怒るよっ!!」


 アテナがまるで聞かない美沙希の攻撃を無視して前蹴りでコーナーまで吹き飛ばす。しかし、美沙希は驚異的なしぶとさでロープに腕をかけ、ダウンを拒絶した。


「ま、まだぁ‥‥‥‥‥‥」


 既に半分以上意識は飛んでいるのだろう。条件反射でダウンを拒否した美沙希だが、アテナの追撃には対応することができなかった。


「おらあぁっ!!」


 リングの対角コーナーから勢いを着けたアテナのショルダーアタック!!


 ずずう‥‥‥んん‥‥‥‥‥‥!!


 美沙希の体がアテナの肉体と、コーナーにサンドイッチにされ、そのままダウンする。


「‥‥‥‥‥‥」


 アテナが前のめりに倒れた美沙希を蹴り転がすと、美沙希は白目を剥いて完全に失神していた。


「‥‥‥そうだね。どうせなら‥‥‥」


 ダウンした美沙希をしばらく見下ろしていたアテナは、このまま終わらせるのは盛り上がりが足りないと、考えていた。このままでは美沙希の粘りでアテナの強さもやや陰りが差してみられてしまうだろう。そう考えてふとあて眺めにしたのがコーナーポストだった。


「そう言えば、あんたの母親もこの会場で負けたんだったねぇ‥‥‥」


 失神した美沙希を抱え上げ、コーナーポストに体をのせる。そしてその後ろに立ったアテナが雪崩式のバックドロップで美沙希をマット中央に向かい投げた。


 ずずーーんっ!!


 会場の観客が惨劇に目を逸らす中、美沙希の華奢な肢体が無防備にマットにめり込んだ。そのまま後方に1回転して、仰向けに大の字になる。


 カンカンカンカンカーーーーン!!!!


 そして、ゴングがうち鳴らされた。美沙希は母親と同じ場所、同じタイトルマッチで、同じように失神KOの憂き目となったのである。


「弱い割にしぶとかったね。まぁ、それしかなかったのかもしれないけどね。何だったらあたしがスパーリングの実験台で雇ってやってもいいけど」


 KOされた美沙希の胸に足をのせ、久々の試合に顔をほころばせたアテナはそう語ったのだった。
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あれだけ熱い前置きあったのに負けちゃうんだ……もったいない感じがするけどリベンジマッチに期待!!
まあ体格差ありすぎるし、思い切った鍛え直しと戦略練りしないと勝つのは無理っぽいですよね……。
自分の書いている小説だと、格ゲー基準で結構体格差関係なしに勝たせちゃったりしてリアリティが無いんですよね……その辺すごく参考になりました。
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