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リングの妖精3-1

第3話「女の意地」前編



 広い会場の中、観客の視線が集まるリングの上で、二人の美女が睨み合っていた。ただし、両方群を抜いた美貌の持ち主とはいえ、その方向性は正反対である。
 青コーナー側に立っているのは、やたらと色っぽいボンテージのコスチュームをまとったブラッディ奥津というリングネームの女性だ。水商売に行けば引く手あまただろう、どこか退廃した妖しさがある。あだっぽいと称するのがぴったり来る彼女だが、試合はすべて大流血試合となり、特に自分の血を見ると、ただでさえもろい理性がぷっつりと切れてしまう、ヒール軍の中でも手のつけられない問題児である。
 対して赤コーナーでは正規軍のトップである月嶋雫が体をほぐしていた。20歳になってさらに女性らしさを増した肢体を純白のコスチュームで包んでいる。二の腕まで届くレースの手袋と、羽根を模したコスチュームが妖精と呼ばれる清純な容貌を彩っている。
 両者とも、凶器を保持していないことを確認し、レフェリーがゴングを要請した。


 カーーン!!


 ゴングが鳴り響き、ブラッディは雫に備えて構えをとり、雫は軽くステップを踏みながらじわじわと近づいていく。


「行くわよっ!!」


 軽いステップから大ジャンプ、そして打点の高いドロップキックがブラッディをねらう。


「う、うわっ!?」


 慌てて飛びすさろうとしたブラッディだったが、胸板にキックを食らう。


「まだだ!!てやぁーーっ!!」


 仰向けに倒れたブラッディを起こした雫はそのままブレーンバスターで投げ捨てる。


「うぐぅっ!!」


 背中を痛打し、うつぶせにダウンしたブラッディ。雫はブラッディの背に馬乗りになり、片エビ固めを極めた。


「っがああああぁぁぁぁぁっ!!!!」


 とたんに走る激痛に、ブラッディは獣のように悲鳴を上げた。うつぶせに押し潰された胸が歪む様がはっきりと見て取れ、妖艶さに観客の目が集中する。


「さぁ、ギブアップ!?」


 雫がギブアップを要求するが、ブラッディは顔を振って拒む。雫もこんな序盤で試合を決めるつもりはないが、スタミナを減らすため、さらに角度を深くしようと背をそらした、そのとき!!


 ごんっ!!


 雫の後頭部に衝撃が走った。


「うああっ!?」


 たまらずにブラッディを解放してマットに這いつくばる雫。その彼女を見下ろすのは乱入してきたヒール軍の樋野京子と吉倉貴子だ。


「く・・・、反則よ、レフェリー!!」


 1対3の状況に、レフェリーに反則を訴える雫だが、レフェリーはリング下で雫を助けに入ろうとしている正規軍の若手と揉み合っていた。


「レフェリー、反則だろう!!」

「反則はおまえたちの方だ!!下がらないとカウントをとるぞ!!」


 レフェリーの職務を果たしているのではなく、ヒール軍と結託しているのは明白だった。雫は3人を相手に孤軍奮闘しなければならなくなってしまった。


「さぁ、立てよ!!」


 性格の荒い樋野が雫の髪を鷲掴みにして立ち上がらせると、みぞおちに膝をめり込ませた。


「ほぅ・・・っ」


 息を詰まらせて体を前に折り曲げた雫に、ねちっこい関節技を得意とする吉倉がギロチンチョークを極める。頸動脈に食い込む締め付けではなかったが、吉倉が雫を振り回すたびに高く突き出されたお尻と前屈みになった胸がふるふると揺れる。


「おお~~・・・・・・」


 プロレス界きっての美人レスラーである雫の色っぽいやられ方に、会場中の人間の目が集中した。会場のモニターが雫を大きく映し出し、揺れる胸と、お尻をズームする。


「く・・・くそぉ~~・・・・・・」


 恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にした雫は、ギロチンチョークをかけられた体勢のままスープレックスで切り返そうとするが、いきなり突き出されたお尻に平手打ちの衝撃が走る。


「ひゃん!!」


 子供の頃以来の痛みに、かわいらしい悲鳴を上げて足をもつれさせた雫を、平手打ちをかましたブラッディ、樋野と、ギロチンチョークを極めたままの吉倉がロープ際まで連行した。


「放せ、このーっ!!」


 じたばたともがく雫をロープに振り、3人そろってのドロップキックが雫の体を貫いた。3人そろっての攻撃に、たまらず仰向けにダウンする雫。すかさずブラッディは雫の足を4の字に極め、吉倉が雫の両腕を関節技で極めた。


「あああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」


 両手両足を極められた雫があまりの苦痛に絶叫した。ロープに逃げることもできず、関節技の苦痛に耐えることしかできない。正規軍の面々は、雫がリンチに遭う様をレフェリーに邪魔され、見ているほかできなかった。


「うああぁぁぁ・・・!!」


 手足に走る激痛に歯を食いしばって耐える雫。しかし、文字通り手も足も出せない状況の彼女に、樋野の追い打ちがかかった。長身の樋野の体重をかけたフットスタンプが雫の薄い腹筋を貫いて内臓を押し潰す。


「くほぉ・・・」


 雫は口のはしから唾液を垂らし、痛みと苦しみに咳き込んだ。強く閉じられた目尻からは薄く涙がにじんでいる。


「まだまだ!!もっと悲鳴を上げなぁ!!」


 しかし、雫への攻めは終わらなかった。樋野は何度も雫の胴の上でジャンプを繰り返し、ブラッディと吉倉は関節技を掛け続ける。


「か・・・あぁ・・・・・・」


 ようやく解放された雫は、マットに横たわり、手足をだらりと伸ばしたまま立ち上がることができなかった。そんな雫を、ブラッディたちは高笑いしながらストンピングで痛めつけた。そして、何発かが雫の額に当たり、皮膚が裂けて鮮血が流れ始めた。


「くあぁっ!?」


 額を抑え、リング下に逃れることに成功した雫は手ひどく痛めつけられた体を抱え、一息つくことができた。その周りに正規軍の若手が集まり、ヒール軍が手出しできないようバリケードを作る。


「はあ、はあ・・・・・・」


 雫は20カウント直前まで体を休め、リングに復帰した。そして、リングロープをくぐった雫を捕まえ、樋野と吉倉がダブルラリアットをねらったが、雫は前転してこれをかわし、反撃のダブルネックブリーカーで切り返した。


「なっ!!」「ぐあっ!!」


 二人そろって仰向けにダウンした樋野と吉倉を正規軍の面々がリングから引きずりおろし、ようやく1対1に持ち込んだ。


「しぶといわねぇ・・・」


 舌打ちしながら顔を歪めるブラッディ。本来なら3人で一気に押し切るつもりだったのだが、雫の予想以上の粘りにその予定は崩されてしまった。


(まぁ、結構痛めつけたし大丈夫よね・・・。もうちょっといたぶっとけばよかったけど・・・)


 1対1の勝負なら雫の方に分がある。とはいえ、3対1で負ったダメージはかなり大きい。ここをうまくつけば雫に勝てるかもしれない、と楽観的に見たブラッディだったが、甘かった。


「さっさとくたばりあそばせ!!」

 ぱぁん!!


 先手をとったのはブラッディだった。張り手が雫の頬に当たり、乾いた音が会場に響く。しかし、雫はそれにひるまず、張り手を連続して叩き込んだ。


 ぱぱぱぱぱんっ!!

「この、卑怯者っ!!一人じゃあ自信が無いから人数に持ち込む!?少しは恥を知りなさいっ!!」


 雫の猛攻の前にガードを固めて後退するブラッディ。そして、雫はガードを固めたブラッディの胴にドロップキックを命中させた。


「ごぼっ!!」


 上半身にガードを集中させていたブラッディは、予想外のボディ攻撃に後ろに吹っ飛ぶ。そして、ロープにはね返されて帰ってきたブラッディを捕まえ、ノーザンライトスープレックスを放った。
 そして、そのままフォールにはいるが、レフェリーのゆっくりとしたカウントに、フォールははね返されてしまう。


「何やっているの!!」


 あまりに露骨なレフェリーに、温厚な雫も怒って詰め寄った。しかし、ブラッディのことを失念していた雫の首に、ブラッディの腕が回ろうとする。
 チョークスリーパーを極めようとするブラッディと、それを阻止しようとする雫がもみ合いになり、その弾みで雫の肘がブラッディの鼻にぶつかってしまった。


「あっ?」「ぐぃっ!?」


 鼻を押さえてブラッディがうつむき、雫はその隙に後ろに下がった。出会い頭の打撃だったため、雫もその隙をついて攻勢に出るのに一瞬遅れた。
 そして、その一瞬の遅れがリングを血の海とすることとなった。


「・・・・・・血だ・・・」


 ぽつりとブラッディが呟いた。雫の肘が当たった鼻から血が流れた。


「・・・・・・?」


 不穏な雰囲気を感じた雫がガードを上げた瞬間、顔をガードした腕にすさまじい衝撃が走った。


「くぅっ!?」


 普段はどこか相手をからかうような雰囲気のブラッディだが、自分の血を見ると、とたんに暴走を始めるのだ。相手のガードなど全く考えず、ただパンチを叩き付ける。


「く・・・う・・・・・・」


 必死にガードを固めて耐えしのごうとした雫だが、ガードの隙間をくぐって額の傷口に1発パンチが入った。


「あぐ・・・!!」


 思わずひるむ雫にさらにパンチが額をえぐった。そして、苦鳴が会場に響く。悲鳴を上げながら後ろによろめく雫。


「らあ、うらぁ、おりゃあああーー!!!!」


 雫を殴り殺す勢いでめった打ちにするブラッディに、雫も掌底で抵抗したが、それはそよ風の抵抗でしかなかった。


「あ、あう、く、ご、ぐ・・・」


 コーナーに追いつめられた雫の足から力が抜け、その場でダウンしそうになったが、ブラッディはそれも許さなかった。
 コーナーを背に腰から砕けそうになった雫をリバースフルネルソンでとらえると、そのまま180度回転し、広角度からスパインバスターで雫を顔面からマットに叩き付けた。
 べちゃ、と音がして白いマットに鮮血の女拓ができあがる。


「ぐ・・・うぅ・・・あ・・・・・・」


 顔を押さえ、リングに横たわる雫を、ブラッディのストンピングの嵐が襲う。


「くっ、あっ、あぁーっ!!こ、この!!なめるなーっ!!」


 ブラッディの猛攻に耐えるだけと思われた雫だったが、勝負を諦めたわけではなかった。狂乱したブラッディの足を掴み、グラウンドに持ち込む。アキレス腱固めが極まった。


「ぎゃああああああーーーーっ!!!!」


 一瞬の自失と、その直後に足首に激痛が走る。ブラッディは会場中に響き渡る絶叫を響かせた。


「くうぅ、ギブ・・・、しろぉ~!!」


 大流血となった雫も限界は近い。渾身の力でアキレス腱を締め上げるが、全身に飛び散った地がぬるぬると滑り、思うように足を締め上げられない。


「二人とも、離れて離れて!!」


 レフェリーが二人を引き離そうとした、そのとき。狂乱がまだ続くブラッディがレフェリーを殴りつけた!!


「ごぉっ!!」


 激しく殴られたレフェリーはもんどり打ってひっくり返る。ここで雫のアキレス腱固めもはずれ、両者は激しく取っ組み合った。
 正規軍、ヒール軍が二人を引き離そうとリングに上がり、もはや収拾のつかなくなった有様に、ついにレフェリーが没収試合の決断をする。


「ふざけるな!!こいつは殺す!!ぶっ殺してやる!!」

「できるならやってみなさいよ!!この程度で私が負けるわけないでしょ!!」


 闘志をむき出しに取っ組み合う両者。結局正規軍とヒール軍がそれぞれを羽交い締めにして控え室まで連れ去り、ブラッディはそのまま控え室で荒れ狂い、雫は貧血のため、病院で手当を受けた。



 こうして雫とブラッディの試合は没収試合となってしまった。


「こんな決着で納得できるわけないでしょ!!次の対戦で徹底的に決着をつけるわよ!!」


「望むところよ!!どんな対戦形式だろうと受けて立つわ!!」


 こうして、この試合で生まれた因縁から、雫とブラッディは再び激しい闘いを繰り広げることとなるのであった。

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